” コージーミステリ ” (cozy = 居心地の良い) というジャンルがあります。
「コージーミステリ」は、イギリス発祥とされています。
アガサ・クリスティーの “ミス・マープル” も、このジャンルとされています。
私的には、”ミス・マープル” は本格的過ぎるような気もしますが。
その昔、
「お茶とケーキをいただきながら、気楽に推理を楽しむ」ミステリ
とも聞いた気がするのですが。
読んでいて、また読んだ後で、
「居心地の良い」状態になることができるミステリ。
今まで読んできてみて “コージー” を私的に括ってみると、
1、探偵役は、それを職業とはしていない “女性” が多い。
(アメリカの作品の場合だと、離婚経験があり、フード系・書籍系の店主が多い)
2、郊外・田舎など風光明媚な土地が主人公の居住地とされることが多い。
3、主人公の恋愛問題が同時進行することが多い。
• 「暴力的な表現が少ない」とも言われるが、結構過激なシーンもあるように
私は思います。
私としては、
「女性が主人公」で「軽めな感覚」がするミステリが、”コージー” かなと思います。
それでも、
クリスティーに連なる作家(女性)の作品が、
“コージー” として扱われていることも多いので、
本当のところ、
よくわかりません。
したがって、
ここでは、私が個人的に “コージー” と感じる作品をあげていきたいと思います。
まずは、わかりやすいところで、
“コージーミステリ” を文庫で刊行している出版社から。
【コージーブックス】(2012年4月に創刊)は、
「日本初のコージーミステリ専門文庫」と謳っているので、間違いありません。
主人公は、ドーナツ屋さん、クッキー屋さん、はちみつ屋さんなどなど。
創刊当時から、毎月楽しみに読んできた文庫です。
なぜか、シリーズが途切れて(出版されなくなって)しまったものが多いのが残念です。
(ドーナツ屋さんとか、はちみつ屋さんとか)
出版される作品全てを購入 という訳にはいかないので、
図書館で借りて読んでみて “お試し” をすることもあります。
その中で、ずっと読み続けてきた作品が、以下の2つです。
「英国王妃の事件ファイル」シリーズ
「英国小さな村の謎」シリーズ
刊行され続けているということは、やはり人気があるのでしょう。
ミステリの中の探偵は、
素敵な男性に恋しながら、
料理をしながら、
お菓子を作りながら、
子育てをしながら、
あちこち旅行をしながら、
犯人をつきとめていきます。
読み終わった後、
なんか幸せな、羨ましいような、
でも少し、主人公に嫉妬してしまったり、
なんてこともあったりします。
是非とも、” コージーミステリ ” を読んでみてください。
コージーミステリ新刊情報
2023年1月7日刊行
「貧乏お嬢さまの困った招待状」
リース・ボウエン(著) 田辺千幸(訳) 原書房 コージーブックス
原題 「God Rest Ye, Royal Gentlemen」(2021年)
ジョージーは、サセックス・アインスレーの邸にいます。
近づくクリスマスについて頭を悩ませていましたが、
夫ダーシーの伯母さんからの招待を受けて、サンドリンガムへと向かいます。
この伯母さんは、二人の結婚祝いに”独創的な絵画”を贈った方です。
“サンドリンガム” は、王室がクリスマスを過ごす邸宅です。
1935年のお話ですが、王は体調がすぐれない状態でした。
王妃は、王の心配をしながら、
このところ続く不審な出来事にも心穏やかならぬところでした。
ダーシーの伯母は、かつて王妃に仕えていた縁でこの地で暮らすことになったのです。
ジョージーは、王妃から心配を打ち明けられ、出来れば解決をと望まれます。
そして、事故が起こり「人が死ぬ」となるのですが、ジョージーは、疑問を持ちます。
今回は、デイヴィッド王子とミセス・シンプソンもふんだんに登場します。
また、昨年亡くなられたエリザベス女王が幼い姿で登場します。
このシリーズは『英国王妃の事件ファイル」となっていて、主役は、ジョージー。
ジョージーは今は結婚して王位継承権はなくなりましたが、以前はありました。
ですので、シリーズ名の『英国王妃』はジョージーを指すのかと思ってきましたが、
今回の作品の「訳者あとがき」で、
この『英国王妃』は、”メアリ王妃”を指していることが書かれていました。
(私的には、「ジョージーの事件ファイル」のような気もするのですが)
この作品では、
イギリス国民にとっての “王室のクリスマス” が
どれほどに大切なものなのかが、よくわかります。
また、王室の一時代が終わり、始まる時を目にすることになります。
悲しいこともあるけれど、楽しいことも待っている。
是非、読んでみてください。
英国王妃が推理する !
英国の王位継承権があるお嬢さまが主人公です。
(34番目くらいだったと思います)
主人公の名前は、ジョージアナ(ジョージー)。
ジョージ―の父が、ヴィクトリア女王の孫にあたります。
王位継承権があれば、「王妃」なのですね。
実は
一作目を読了後に、一体「王妃」は誰を指して言っているのかと、
ページを繰り繰り考えてしまいました。
” メアリ女王 ” が登場するので、この方のことを言っているのか。
などど、考えてしまいました。
しかし、推理をして事件解決をしたのは、” 貧乏お嬢さま ” なので、
やっと、「英国王妃」の意味が判明したという訳でした。
このお嬢さまは、”貧乏”なのです。
兄嫁にいじめられ、居城を追い出され、ロンドンのお屋敷で暮らすことになりました。
が、そのお屋敷も寂れていて、身の回りのこともお嬢さま自身でしなければなりません。
(しかし、このお屋敷も兄嫁に追い出されることになるのです)
とにかく、お金がないので、仕事を探します。
メイドをしてみますが、なかなかうまくいきません。
食事は、パンに缶詰の豆。
(海外の作品を読んでいると、よく”豆”がでてきます)
そんなこんなで、苦労だらけの生活をしていると、
メアリー女王からお呼び出しがかかるのです。
あの、バッキンガム宮殿にタクシーで(遠慮がちに)乗り付けるのです。
高圧的なメアリ女王から、無理難題を押し付けられて、事件に遭遇、という感じ。
その宮殿では、お茶とケーキ満載でおもてなしされるのですが、
これも、ジョージ― は、遠慮してしまうのです。(お腹ペコペコなのに)
ジョージ―は、ほんとにいい子です。
気持ちのいい女の子です。
現在は14作目まで刊行されています。
ジョージ―の生活も変化を遂げてきました。
14作目は、ジョージ―の親友とその幼馴染たちが絡む殺人事件を解決していくものです。
コーンウォールが舞台ですが、天候が悪い場面が多くちょっと寒々しかったです。
しかし、最後には、事件解決。ジョージ―も帰還。
そこで待っていたのが、メイド(ちょっと困り者であったが、料理ができることが判明した)
が作ったお菓子のオンパレードです。
チョコレートエクレア、シュークリーム、ブランデースナップ、メイズ・オブ・オナー、
メレンゲ菓子、ヴィクトリア・スポンジ、大きなプラムケーキ、ショートブレッド、
サンドイッチ、スコーン。
•ブランデースナップ
薄く焼いたジンジャー味のビスケットを筒状にしてクリームを詰めたもの
•メイズ・オブ・オナー
甘いチーズカートを詰めたタルト
このラインナップがなんとも羨ましいではありませんか。
この作品を未読の方にもわかると思いますが、
これだけのお菓子が並んでいるということは、
ジョージ―の今は “HAPPY” ということです。
ジョージ5世とメアリー女王の息子たちは、
あの王位を捨てたエドワード8世であり、
(その原因となった女性を探るようにとの命もジョージ―に下されたこともあります)
ーその女性ですが、とても評判が悪いのです。王室に関する書物やこの当時を描いた
小説を読んでも、とても評判が悪いのです。これらを読むまでは、TVなどで、
「王位を捨てた世紀の結婚」などとロマンティックに表現されてきたのを見てきた
ので、この女性に対しての認識を一変することになりました。
また、その弟で次いで王位についたジョージ6世は、
「英国王のスピーチ」(映画)にもなった王(エリザベス女王の父君)なのです。
現英女王も賢い女の子として登場します。
他にも、ココ・シャネルなど、当時の有名人も登場してきます。
「英国王妃の事件ファイル」シリーズ、おすすめです!!
●<英国王妃の事件ファイル>シリーズ
1作目「貧乏お嬢さま、メイドになる」(2013年5月)
リース・ボウエン(著) 古川奈々子(訳) 原書房 コージーブックス
14作目「貧乏お嬢さま、追憶の館へ」(2021年11月)
リース・ボウエン(著) 田辺千幸(訳) 原書房 コージーブックス
15作目「貧乏お嬢さまの困った招待状」(2023年1月)
リース・ボウエン(著) 田辺千幸(訳) 原書房 コージーブックス
アガサ・レーズンって誰 ?
アガサ・レーズンです。
アガサ・クリスティーではありません。
アガサ・クリスティーについては、
『「内気な女の子」が大人になった』というイメージがあります。
アガサ・レーズンは違います。
“強気120%”で、グイグイ行っちゃいます !!
生い立ちには悲しい面もありますが、
PR業界で成功し、早期に引退をしました。お金持ちです。
子どものころからのあこがれであった、コッツウォルズに家を買います。
その村で、事件があれこれと発生します。
アガサは、「クマのような目とサラサラの髪、素敵な脚」の持ち主。
隣人の男性に恋をする傾向があり、いろいろと問題も発生。
村の牧師の奥さんがいい人で、アガサのことを何かと気にかけてくれます。
(逆にこの牧師はアガサを嫌い、あからさまな態度をとります)
また、最初の事件で知り合った若い刑事さんとも友情が生まれます。
友人など作らずロンドンでバリバリ仕事をしてきたアガサですが、
この村で友人と呼べる人達と出会うことができました。
少し反感を買ったりもする行動をとってしまうアガサですが、
ひとり悲しみにくれることもあるんです。
毎回、警察を出し抜いて犯人逮捕に貢献するのですが、
アガサは、警察からの受けはよくありません。
それでも、この作品を読んだあとは、
なぜか、アガサみたいに
怖いもの知らずの気分になってしまいます。
「ちょっと弱気で、いつも損ばかりしている気がする」なんて女性の方には、
是非とも読んでいただきたいです !!
『アガサ・レーズン』です !!
2022年の”アガサ・レーズン”
アガサ・レーズンの奇妙なクリスマス (2022年9月8日刊行)
M・C・ビートン(著) 羽田詩津子(訳) 原書房 コージーブックス
アガサ・レーズンの復縁旅行 (2022年3月8日刊行)
M・C・ビートン(著) 羽田詩津子(訳) 原書房 コージーブックス
「奇妙なクリスマス」は<英国小さな村の謎>シリーズ18作目。
「復縁旅行」は同シリーズ17作目。
「復縁旅行」では、またも隣に越してきた元夫のジェームズに誘われて旅行に
行くのですが、その場所はジェームズの良き思い出の姿とは程遠いものとなっ
てしまっていました。その上に殺人が起こり、アガサが容疑者とされてしまい
ます。当然アガサは事件の解明に動きます。アガサの第一希望は、ジェームズ
との関係が良い方へと向かうことなのですが、なかなか思い通りにはいきませ
ん。アガサを心配して、牧師の妻のミセス・ブロクスビーがやってきます。命
を狙われたりして、アガサも気弱なところを見せたりもします。
「奇妙なクリスマス」では、10月からクリスマスを成功させようと躍起になる
アガサがいます。もちろん、ジェームズとのためにです。17歳 (作中で18歳に
ります) の女性が探偵事務所に仲間入りします。家庭環境が悪いところに同情
して (アガサも酷い幼少期を過ごしました) 厚遇してあげますが、その若さに
嫉妬したりもします。それと同時に自分の年齢について落ち込んだり。
事件としては、資産家の老婦人が毒殺されます。家族に遺産を残さないと公言
していた老婦人でした。家族に殺されそうだという手紙をアガサが受取り、事
件と関わっていきます。
終盤には、アガサのクリスマス風景を楽しむことができます。
それにしても、アガサの周りには、男性がいろいろと集まってきます。
意中の相手とはなかなかうまくいきませんが、結構モテモテの状態に近いような
気もするのですがね。
ここ何作かで、アガサは関節炎に悩まされています。痛みがあっても、ハイヒー
ルを履こうとする気概はすごいものだと思います。
作中にアガサと同じ「人工股関節置換手術」が必要な女性が登場します。待機リ
ストで2年半の手術待ちをしていることを聞いたアガサは、すぐに地区の議員に
抗議電話をかけ高圧的に叱りつけて、こちらの要求をのませます。
また、「復縁旅行」では、”カジノ建設について” の町の集会で勝手に壇上に上
がっていき、叫びます。「この連中 (カジノ業者・町長) に立ち向かいなさいよ」
と。町民から拍手喝采を浴びるアガサがいます。
スカッとしますね、アガサには !!
日々の生活の中で、言えないことや出来ないことが、ままあります。
が、アガサを読んだあとは、なんか少し出来そうな気がしてきます。
ほんのちょっとですけど。
ジェームズに対する気持ちについては、
「奇妙なクリスマス」を読んで確かめてください。
次作 (2023年予定) では、”いいひと” が登場するようで、アガサがどん
な行動に出てくるか楽しみです。悲しいことにならないといいですけ
れど。このところ、アガサはちょっと打たれ弱くなっているような気
がするので。
とにかく、次作を待ちましょう !!
●<英国小さな村の謎>シリーズ
1作目「アガサ・レーズンの困った料理」(2012年5月)
M・C・ビートン(著) 羽田詩津子(訳) 原書房 コージーブックス
16作目「アガサ・レーズンと完璧すぎる主婦」(2021年7月)
M・C・ビートン(著) 羽田詩津子(訳) 原書房 コージーブックス
アガサは、15作目で探偵事務所を開所します。
15作目「アガサ・レーズンの探偵事務所」(2021年2月)
M・C・ビートン(著) 羽田詩津子(訳) 原書房 コージーブックス
ヒツジがわんさか村のお巡りさん
「コージーミステリ」を定義するもののなかに、
『「警察官」「職業探偵」は含まれない』というものもあったりするのですが、
長閑な田舎でひとりでお勤めするお巡りさんが登場する作品が、
「コージーブックス」にあります。
<英国ひつじの村>シリーズです。
こちらも、”貧乏お嬢さま” シリーズと同じく
リース・ボウエン(著) の作品です。
ウェールズ地方の小さな村が舞台です。
スランフェア村。
エヴァン・エヴァンズ。
この村の巡査です。
因みに、
精肉店は「G・エヴァンズ」
乳製品販売店は「R・エヴァンズ」
いずれも、他人ですが、エヴァンズです。
そして、イギリスといえば、パブ。
「レッド・ドラゴン」がこの村のパブ。
そこのウェイトレスのベッツィはなかなか積極的です。
エヴァンは学校の先生のブロンウェンと交際中。
にもかかわらず、ベッツィはグイグイ攻めていきます。
最新作のシリーズ6作目では、
“ベッツィに超能力がある” かも、から話が進んでいきます。
そして、殺人。
エヴァンはブロンウェンとの結婚を考えだしてから、
上の階級を目指しはじめるのですが、
なかなか思い通りにはいきません。
犯人逮捕では、
北ウェールズ警察の上を行っているエヴァンなのですがね。
この村には、個性的な人達が暮らしています。
たとえば、二つの礼拝堂が向かい合って建っているのですが、
6作を読んできても、正直なところ、
どっちがどっちか判然としないままで、今に至っています。
(二つの礼拝堂は当然、仲が悪いです)
6作目では、ベウラ礼拝堂のミセス・パウエル=ジョーンズだけが登場。
彼女は、具合の悪いブロンウェンに、
「子牛の足のゼリー寄せ」を食べさせようとします。
(料理名を聞いただけで、病気が悪化しそうな気がします)
舞台となっている土地の人や風物に触れながら、
犯人捜しをするのは楽しいと思います。
●<英国ひつじの村>シリーズ
1作目「巡査さん、事件ですよ」(2018年9月)
リース・ボウエン(著) 田辺千幸(訳) 原書房 コージーブックス
6作目「巡査さんと超能力者の謎」(2021年12月)
リース・ボウエン(著) 田辺千幸(訳) 原書房 コージーブックス
元祖コージーの女神さま
“コージーミステリ” の始まりは、この方というのが通説になっています。
アガサ・クリスティーの作品の名探偵。その名は、
ミス・ジェーン・マープル。
ミス・マープルの初登場作品が、
「ミス・マープル 最初の事件 牧師館の殺人」(創元推理文庫)です。
(The Murder at The Vicarage 1930)
この作品は、
・1986年 8月「牧師館殺人事件」(新潮文庫 訳・中村妙子)━━(絶版)
・1953年11月「牧師館の殺人」(ハヤカワポケットミステリ 訳・山下暁三郎)
1978年 7月「 〃 」(ハヤカワミステリ文庫 訳・田村隆一) ☆1
2003年10月「 〃 」(クリスティー文庫 訳・田村隆一 [新版])
2011年 7月「 〃 」(クリスティー文庫 訳・羽田詩津子 [新訳版]) ☆2
・1976年 6月「ミス・マープル最初の事件」(創元推理文庫 訳・厚木淳)
2007年 4月「 〃 」( 〃 〃 [新版])
2022年 7月「ミス・マープル最初の事件 牧師館の殺人」
(創元推理文庫 訳・山田順子 [新訳版])
と、以上のように出版されてきました。
現在は、(紙媒体としては)早川書房と東京創元社からのものを読むことができます。
☆1・ 表紙は真鍋博さん。
この頃のクリスティーの作品は、真鍋さんの装画になります。
(真鍋博さんによるクリスティー作品の表紙は大好きでした)
真鍋博さん(1932年~2000年)
イラストレーター、アニメーター、エッセイスト。
真鍋博さんのご長男は、真鍋真さん。
真鍋真さんは、古生物学者、恐竜学者。
恐竜や宇宙などの書籍の監修などを多くなさっています。
●「せいめいのれきし 改訂版」バージニア・リー・バートン(文・絵)
いしいももこ(訳)
まなべまこと(監修)
岩波書店
・翻訳としては、田村隆一さんから羽田詩津子さんになりました。
田村さんも羽田さんも信頼でき、大好きな翻訳家さんです。
羽田詩津子さんの翻訳作品は多く読んできています。
(リリアン・J・ブラウン、リース・ボウエンなど、おすすめです)
詩人でもある田村隆一さんの翻訳も捨てがたいと思います。
作品の原本は変わらずとも、時代が変われば、翻訳も変わって
いかなくてはならないのでしょうね。
繰り返しますが、羽田詩津子さんの翻訳する作品は大好きでし、
読んで面白いことに間違いはありませんので、あしからず。
・リリアン・J・ブラウンの「シャム猫ココシリーズ」中の料理を
羽田さんが実際に調理した著書、
「猫はキッチンで奮闘する」(早川書房 2008年刊) があります。
・<クリスティー文庫>では、
「マギンティ夫人は死んだ」「なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?」
「シタフォードの秘密」「魔術の殺人」など、
田村隆一さんの訳になる作品があります。
田村隆一さんは、詩人、随筆家、翻訳家。
3度目に結婚したのが、岸田衿子さんです。
・岸田衿子さんは、詩人、童話作家、翻訳家。
1966年刊の「かばくん」(岸田衿子(作) 中谷千代子(絵) 福音館書店) は、
2022年度の “ミリオンぶっく” では、136万部の発行部数となっています。
岸田衿子さんは、TVアニメ「アルプスの少女ハイジ」
「フランダースの犬」「あらいぐまラスカル」「赤毛のアン」の主題歌の
作詞を手掛けています。
女優の岸田今日子さんは、妹さん。俳優の岸田森さんは、従弟さん。
このお二人といえば、TVドラマ「傷だらけの天使」ですね。
☆2・装画は安西水丸さん。
安西水丸さん(1942年~2014年)
イラストレーター、漫画家、エッセイスト、作家、絵本作家。
多才ぶりで知られた方でした。
亡くなってからも、展覧会などの開催が多い方です。
安西水丸さんの絵本には、“ミリオンぶっく” に選出されている作品があります。
(2022年度は、259万部の発行部数になっています)
●「がたん ごとん がたん ごとん」安西水丸(作) 福音館書店
━━電車が がたん ごとん とやってきて、何かが増えていき、最後には、
かわいい女の子が待っているのですが。━━
なんともかわいい絵本です。1987年6月の刊行ですが、2012年5月には、
●「がたんごとん がたんごとん ざぶんざぶん」安西水丸(作) 福音館書店
が、刊行されています。
「牧師館の殺人」について
本の最初に、セント・メアリ・ミード村の地図が掲載されています。
ミス・マープル、ミス・ハートネル、ミス・ウェザビーと三軒が隣り合っています。
ミス・マープルの隣が牧師館。
牧師館の裏木戸は道の突き当りで、ミス・マープルの庭から見ることができます。
ミス・マープルは、あらゆるものを見逃しません。
牧師館で、傲慢このうえないプロザロー大佐が殺されるという事件が起こります。
クレメント牧師がこの本の語り手です。
牧師は、ミス・マープルの “怖さ” を知っています。
ミス・マープルをなめてかかる警察。
人間観察を第一の趣味とするミス・マープルが、警察を出し抜くことはお約束です。
銃声の謎、被害者が書いたとする最後の手紙の真偽、
最初に自首した男、被害者の若い妻、つかみどころのない綺麗な娘、
問題を抱えている牧師補、メイドのB.Fの素行の悪い男、
村に来ている考古学者にも不審な点があったり、と。
村の女性陣から、「家に来てくれ」と連絡を受け、周り歩く牧師さん。
何とも大変な苦行ですが、以外にもサラッとこなしていきます。
牧師補からの「告白したい」とうTELから、事件は一直線に解決へ。
もちろん、ミス・マープルの独壇場です。
「なんともはや」と絶句状態のメルチット大佐(州警察本部長)。
ラストでは、牧師に年若い妻から、ある報告がなされるのですが、
この件についても、ミス・マープルにおいては
すでに承知おきのことでした。
牧師は、最後にミス・マープルを
「かわいらしいところがある」と、評します。
コーヒーの旨い書店より
舞台裏の殺人
キャロリン・G・ハート(著) 青木久恵(訳) 早川書房
『デス・オンデマンド』書店。
所在地は、サウスカロライナ州にあるブローワーズ・ロック(架空の島)。
書店主は、アニー・ローランス。
キャロリン・G・ハート Carolyn Gimpel Hart (1936年8月25日~)
アメリカ合衆国の推理作家
1965年からヤングアダルト向け作品を執筆。その後、ミステリ作品なども執筆。
サラ・パレツキー、スー・グラフトンなどの女性作家がデビューし、アメリカでも
人気が出てくると、キャロリン・G・ハートの〈デス・オンデマンド〉シリーズも
注目されるようになってきたのです。
★サラ・パレツキー
「サマータイム・ブルース」(1982)
〈V・I・ウォーショースキー〉シリーズ
★スー・グラフトン
「アリバイのA」(1982)
”アルファベット・ノベル” と呼ばれるようになるタイトルに<A.B.C.D…>が
つく作品を発表していく。探偵役は、キンジー・ミルホーン。
この二人の作家の作品は、同じ1982年に発表されていて、二人の女性探偵の年齢も、
「32歳」に設定されて始まりました。
(当時、女性探偵のカッコよさに、スカッとしたし、憧れました)
〈デス・オンデマンド〉シリーズ
1作目 「Death on Demand」(1987年)
2作目 「Design for Murder」(1988年)
3作目 「Something Wicked」(1988年)
この3作目が「舞台裏の殺人」として1991年11月に日本で刊行されました。
早川書房の「ミステリアス・プレス文庫」です。
この「ミステリアス・プレス文庫」は、他の文庫より少し大きかったです。
そして、表紙の紙質も違いましたね。(印刷の関係なのかな)
この文庫のカバーイラストはとても素敵でした。
女がこうもり傘を持つとき
『村で噂のミス・シートン』
『ミス・シートンは事件を描く』
ヘロン・カーヴィック(著) 山本やよい(訳) コージーブックス
《コージーブックス》は、原書房のコージーミステリ専門の文庫レーベルです。
2作品は、2019年2月・4月と刊行されましたが、その後音沙汰無し。
ヘロン・カーヴィック
1913年 イギリス生まれ
俳優としても活躍。
「村で噂のミス・シートン」で作家デビューしました。
1980年 死去。
その後は、別の著者により〈こうもり傘探偵〉シリーズは書き継がれています。
趣味は裸で泳ぐことです
『マーロー殺人クラブ』
ロバート・ソログッド(著) 髙山祥子(訳) アストラハウス
ロンドン郊外のマーローが舞台です。
主役は、ジュディス・ポッツ、77歳。
この手の “お話” ではよくある、相続により所有することになった邸に一人住まい。
” タイムズ紙 ” にクロスワードの考案をしています。
ウイスキーを飲むのが大好き。
そして、夜、裸でテムズ川を泳ぐのが好き。
そして、その泳ぎの最中に、隣人の殺人を目撃してしまいます。
警察に通報するも、殺人は確認されませんでした。
そこで、ジュディスは一人で調べ始めます。
犬の散歩代行をしている、スージー・ハリス。
司祭の妻の、ベックス(レベッカ)・スターリング。
この二人と知り合い、「マーロー殺人クラブ」を結成することに。
その後も殺人が続いていくのですが、
クラブの面々は、体当たりで事件に挑んでいきます。
危険な場面もあったりします。
さて、ジュディスですが。
ジュディスの邸の中に鍵のかかった部屋があります。
ジュディスの結婚についての “くだり” がありますので、お楽しみに。
また、そのことがこの後にどう関わっていくのか。
あくの強いスージー、悩み多きベックスについても、今後が楽しみです。
タニカ・マリク巡査部長の登場も続くと思います。
この作品は、2021年刊行(日本では2022年8月10日刊行)されました。
ロバート・ソログッド (Robert Thorogood)
1972年 イギリス・エセックス州コルチェスター生まれ
脚本家、小説家
現在は、この作品の舞台となった “マーロー” に妻子、犬(2頭)と暮らす
━━ ” 犬 ” とは、ウィペット犬。名前は「ウォーリー」と「イヴィー」。
★この作品の2作目が2022年に刊行されています。
タイトルは、「Death Comes to Marlow」です。
ブンブンブン、ハチがとぶ
『ミツバチたちのとんだ災難』
ハンナ・リード(著) 立石光子(訳) 原書房 コージーブックス
<はちみつ探偵>シリーズ 1
原題は「Buzz Off」(2010年刊行)(日本・2012年4月10日刊行)
舞台はアメリカ・ウィスコンシン州モレーン。
小さな町の雑貨店<ワイルド・クローバー>を営む女性、
ストーリー・フィッシャーが主人公です。
目下、養蜂家のマニー・チャップマンに教えを受けているところです。
そのマニーが、”全身ミツバチ” という状態で死亡。
スズメバチの死骸をみつけたストーリーは、”殺人” と進言するも受け入れられず。
ストーリーは、やっと離婚ができたところ。
女性関係のはげしい元夫が登場してきて、またも女がらみの面倒を起こし、
更に殺人へと発展していきます。
ストーリーは、危険含みの犯人追跡をしていきます。
注:本文中の “ストーリー” は、人名です。
ハンナ・リード(Hannah Reed)
1953年生まれ アメリカの作家 ウィスコンシン州に在住
別名義 デブ・ベイカー(Deb Baker) で、
「Murder Passes the Buck」を2006年に刊行。
この作品がある新人賞を受賞し、作家デビュー。
<はちみつ探偵>シリーズは、
②「家出ミツバチと森の魔女」(日本・2012年9月10日刊行)
③「泣きっ面にハチの大泥棒」(日本・2013年9月10日刊行)
④「女王バチの不機嫌な朝食」(日本・2014年11月10日刊行)
━━以上の4冊が出ています。まだ、在庫もあるようですので是非読んでみてください。
★この作品の表紙は、杉浦さやかさんが担当しています。
注目すべき点の一つです!!
ミズ・ドーナツ
『午前二時のグレーズドーナツ』
ジェシカ・ベック(著) 山本やよい(訳) 原書房 コージーブックス
<ドーナツ事件簿>シリーズ 1
原題「Glazed Murder」
主人公は、スザンヌ・ハート。
舞台はノースカロライナ州エイプリル・スプリングズ。
スザンヌは、俳優のマックスと離婚。原因は、マックスの浮気。
マックスからふんだくった慰謝料で、ドーナツ店を買い<ドーナツ・ハート>をオープン。
そのマックスは今、教会で町の高齢者たちと「ウェストサイドストーリー」を稽古中。
スザンヌは、
午前1:30に起床。
午前2:00には店に行き、ドーナツ作り。
午前5:30オープン。最初のお客は、ジョージ。(いつもです)
そして、事件発生。
午前2:00、店の明かりをつけると、車が止まり死体を投げ出して行った。
死体は、店の客のパトリック。
スザンヌは犯人捜しをすることになります。
アメリカの警察小説の警官とくれば、ドーナツです。
ドラマ、映画でも、年齢に関係なく、甘そうなドーナツを食べていますよね。
スザンヌはいつも、売れ残ったドーナツを箱に詰めて、施設に差し入れに行きます。
本の最後には、ドーナツのレシピが掲載されています。
いつか作ってみようと思っているところです。
何年も実行に移されてはいないのですが、
作品を読んだ方は、きっと作りたくなると思います。
ジェシカ・ベック(Jessica Beck)
アメリカの作家 ノースカロライナ州在住
別名義でも多くの作品を発表しています。
<ドーナツ事件簿>シリーズは、
アメリカでは2013年までに10冊刊行されているようです。
1作目の「午前二時のグレーズドーナツ」は、2010年に刊行。(日本では、2012年5月)
2作目 「動かぬ証拠はレモンクリーム」(2010年(日本・2012年10月))
3作目 「雪のドーナツと時計台の謎」 (2010年(日本・2013年4月))
4作目 「エクレアと死を呼ぶ噂話」 (2011年(日本・2014年4月))
5作目 「誘拐されたドーナツレシピ」 (2011年(日本・2014年10月))
~10作目「Deadly Donuts」(2013年)
●6作目からの刊行が、日本ではされていません。
~ コージーブックス様 ~
”おいしそうなドーナツ” 作品の翻訳出版を、是非ともお願いします。
こちら、クッキーカッター専門店
『フラワークッキーと春の秘密』
バージニア・ローウェル(著) 上條ひろみ(訳)
原書房 コージーブックス
<クッキーと名推理>シリーズ 1 (A Cookie Cutter Shop Mysteries)
主人公は、リヴィー(オリヴィア・グレイソン)。31歳。
(離婚をしたものの、元夫は、花束を持ってやって来たり、電話をしてきたり)
チャタレーハイツという町(米東部ワシントンDCとボルチモアの間あたり)で、
<ジンジャーブレッドハウス>というクッキーの抜型などを扱う店を、
マディと共同経営しています。
友人でもあり、仕事のアドバイスもしてくれる、クラリスが死亡。
いつもは飲まない量のワインと睡眠薬で「死亡」とされてしまいます。
クラリスの死に疑問をもったリヴィーは、独自に調査を始めます。
容疑者は遺産相続人や借金のある人物など。
7年前の出来事も何か関連があるようです。
リヴィーの専門である「クッキーカッター」も事件解決に一役買います。
おいしそうなクッキーや骨董的価値のある抜型も登場して、
物語のほかにも楽しい興味が盛りだくさんです。
また、リヴィーの愛犬のヨークシャー・テリアのスパンキーも可愛い。
リヴィー、マディ。
それぞれにも、お相手が見つかったようですし、
そういう要素(恋愛模様)があった方が “いいわ” という方には、
このシリーズも楽しみになっていくのではないでしょうか。
ヴァージニア・ローウェル(Virginia Lowell)
アメリカの作家 アメリカ中西部で育つ
と言っても、日本では、シリーズ1作目が2012年に刊行。
2作目「野菜クッキーの意外な宿敵」(2013年)
3作目「お菓子の家の大騒動」(2013年)
と、刊行が止まっています。
アメリカでも、
4作目「One Dead Cookie」(2013年)
で、執筆は止まっているようです。
シリーズ3作品は入手可能な状態です。
機会があれば、読んでみてください。
前出の「ドーナツ」同様、こちらの「クッキー」も
作りたくなったり、食べたくなったり、すると思います。
❤ アメリカの “コージー” 作品は、
大概が、30歳前後の離婚経験女性。小さなお店を経営中。
事件に関係した警官などと、恋愛関係に落ちていくパターンが多い。
時に、主人公の母親の恋愛も同時進行することもあります。
━━という感じですね。
老舗チーズ専門店
『名探偵のキッシュをひとつ』
エイヴリー・エイムズ(著) 赤尾秀子(訳) 原書房 コージーブックス
<チーズ専門店>シリーズ 1 (CHEESE SHOP Mysteries)
シャーロット・ベセットが主人公で、
チーズ & ワイン 専門店<フロマジュリー・ベセット>店主。
いとこのマシューと共同経営しています。
この店は祖父母が始めたものでした。
店をリニューアルオープンさせた、その祝いの日に事件は起きました。
店の地主であり不動産業者のエド・ウッドハウスが刺殺されたのです。
エドと口論し死体発見者となった祖母のバーナデットが、容疑者にされてしまいます。
バーナデットはこのプロヴィデンスの町長で、今は選挙戦の只中です。
シャーロットは、仕事の傍ら犯人捜しに乗り出します。
◎犯人捜しのヒント━━卒業アルバム、レインコート━━
☆アメリカのコージー作品の共通項としての、お約束のロマンスのご報告を。
シャーロットはチーズ製造業者に恋をして、
マシューは教師と恋仲に。
作品に登場したチーズ、料理レシピの紹介もあります。
犯人捜し、ロマンス、美味しい料理など、
しあわせ度が満載の作品をお楽しみください。
エイヴリー・エイムズ(Avery Aames)
カリフォルニア州生まれ
ロサンゼルスで女優として活動した後に、作家に。
長編デビューした作品が
「名探偵のキッシュをひとつ」(The Long Quiche Goodbye) です。
そして、この作品が2010年度『アガサ賞』処女長編賞を受賞しました。
(アガサ賞ーアガサ・クリスティーに敬意を表したミステリの文学賞)
なんと、エイヴリー・エイムズさんは、
「ジェシカおばさんの事件簿」シリーズに女優として出演していたそうです!
<チーズ専門店>シリーズは、4冊刊行されています。
1、「名探偵のキッシュをひとつ」(米・2010年刊行(日本・2012年4月))
2、「チーズフォンデュと死の財宝」(米・2011年刊行(日本・2012年11月))
3、「消えたカマンベールの秘密」(米・2012年刊行(日本・2013年6月))
4、「ブルーベリー・チーズは大誤算」(米・2013年刊行(日本・2014年7月))
もしも、女医だったら、コージーかしら?
『サム・ホーソーンの事件簿Ⅰ』
エドワード・D・ホック(著) 木村二郎(訳) 東京創元社
<サム・ホーソーン医師>シリーズ
★このシリーズは、日本オリジナル編纂による短編集です。
東京創元社より、2000年に「Ⅰ」が刊行されてから、
2009年に「Ⅵ」が刊行となり、計6冊となります。
まず、「Ⅰ」の1作目。「有蓋橋の謎」
屋根の架かった橋。そこを渡っていた馬車が消えます。その謎を解いてみせます。
いとも簡単に、です。
物語は、
引退した医師・サム・ホーソーン氏が事件を回顧するという形です。
1922年に新米医師として開業した田舎町ノースモントが舞台。
語られる事件は、1920年代から1940年代に起きたもののようです。
医師になったお祝いに両親からプレゼントされた車、
「ピアース・アロー=ランアバウト」(黄色い高級車)を乗り回して、
仕事に謎解明にと、充実した日々だったようです。
とにかく、”短編” です。
こんな短い間(30~40頁)に、なんと、事件と謎解きが済んでしまうのです。
読みやすいですし、読み終わるたびに、内容に感心されることと思います。
エドワード・D・ホック(Edward Dentinger Hoch)
アメリカの作家 1930年ニューヨーク州ロチェスター生まれ。2008年歿。
1955年、雑誌に<サイモン・アーク>もの短編「死者の村」が掲載されて、
作家デビューとなりました。
以降50年以上にわたり “短編ミステリの第一人者” として活躍してきました。
●短編を彩る主人公は他に、
<怪盗ニック・ヴェルヴェット> <サイモン・アーク> <レオポルド警部> など。
装画担当の西山クニ子さんの表紙画の “サム・ホーソーン” 氏が
「とても、いいです」よね。
この時代のきちんとした身なりの男性って、素敵ですよね。
作品を読めば、サム・ホーソーン氏の人となりについても、
納得していただけることに間違いはございません。
併せて、シリーズ作品の読破も、「あっ」という間となります、きっと。
◎最後に、
不可能犯罪を取り扱うこの作品について、「コージー」ではないだろうと
考える方も多いと思いますが、もしも、サム・ホーソーン氏が女性であり、
田舎町の開業医でありながら、事件の謎を解きまくっていたとしたら。
人はこの作品を「コージー」と呼ぶのではないでしょうか。
と、思うのですが、いかがでしょうか。
さても面妖、イギリスのパブ
『「禍の荷を負う男」亭の殺人』
マーサ・グライムズ(著) 山本俊子(訳) 文春文庫
<警視リチャード・ジュリー>シリーズ 1
ロンドン警視庁のリチャード・ジュリー警視。
舞台は、イングランド中部ノーサンプトンシャーのロング・ピドルトン村。
村のパブ「禍の荷を負う男」亭で事件が発生。
ビヤ樽に、絞殺された男が頭から押し込まれてしまうのです。
その第一発見者が、レディ・アガサ・アードリー。
その甥が、メルローズ・プラント。
メルローズは、子爵の称号を放棄。資産と教養と暇はたっぷりあります。
一方、アガサは貴族になり、「レディ」と名乗るようになったのです。
ジュリーも教養があり、事件を通してメルローズと親交を深めていきます。
事件には、アガサも頭を突っ込んできますし、
男性陣の女性関係もいろいろな模様を醸し出してきます。
事件については、
「ジャックとハンマー」亭、「二つの首のスワン」亭、
と、パブでの奇妙な状況が相次ぎます。
シリーズ名には、”リチャード・ジュリー” の名が冠されていますが、
「メルローズが主役」という感が、私的にはしています。
マーサ・グライムズ(Martha Graimes)
アメリカの作家 1931年5月2日生まれ ペンシルベニア州ピッツバーグ出身
シリーズ1作目はアメリカでは、1981年刊行。日本では1985年に刊行されました。
また、『「禍の荷を負う男」亭の殺人』は、2014年に新版が出ています。
シリーズ13作目『「レインボウズ・エンド」亭の大いなる幻影』は、
アメリカでは1995年、日本では1998年(訳・山本俊子)で刊行されて以降、
14作目からの翻訳出版はなされていません。
アメリカでは、14作目『The Case Has Altered』(1997) ~ 23作目『Vertigo 42』(2014)
までが刊行されているようです。
このシリーズは、すべて “パブ” の名前がついています。
“マーサ・グライムズ ホームページ” には、作品のパブの地図が載っています。
マーサ・グライムズ氏は、5月で92歳になられるのですね。
「いつまでも、お元気で」と、日本から伝えたいです。
このシリーズは、”コージー” とされていますけれど、
ドタバタ感があるものの、本格の雰囲気もあり、
読み応え十分で、イギリスのパブに浸れるおまけ付きとなっています。
新刊での入手は困難ですが、是非とも読んでいただきたい作品です。
科捜研の少女
『サンタクロースは雪の中』
アラン・ブラッドリー(著) 古賀弥生(訳) 東京創元社
<少女探偵フレーヴィア>シリーズ 4
フレーヴィア・ド・ルース、11歳。
化学にのめり込み中の少女です。
イングランドの古い邸《バックショー荘》に、父と姉ふたりと暮らしています。
亡くなった母については、物語の処々で触れられます。
世間ずれした父と意地の悪い姉との暮らしを癒してくれるのが、化学です。
おじさんの遺した実験室をフル活用して、勉強・実験に日々励んでいます。
暖をとるのも、飲み物を頂くのも、実験の手順を踏んで行います。
1950年代の物語です。
そんなシリーズの第4作目「サンタクロースは雪の中」。
フレーヴィアは、サンタクロースを捕まえようとして強力な “鳥もち” を作ります。
財政難の《バックショー荘》は、映画撮影に邸を貸すことになりました。
クリスマス・イブの夜、《バックショー荘》では、
女優らによる「ロミオとジュリエット」が演じられることになりました。
そして、女優フィリス・ワイヴァーンが殺されます。
第1発見者はフレーヴィア。庭師のドガーと死体検分をします。
死体は、死後着替えさせられ、化粧もされていると気付くフレーヴィア。
その上、首にはフィルムが巻かれており、それは蝶結びにされていた。
ヒント:フィリスのバックに見つけた免許証に書かれていた名前
古い映画誌
さて、フレーヴィアですが、
雪の中、屋根に上っていきます。
何をしようというのでしょうか。
そして、クリスマスプレゼントに望んでいた「実験用フラスコ一揃い」は、
手にすることができたのでしょうか。
読んでみて間違いなしの一品です。
是非、一読して結果がどうなったか確かめてください !!
アラン・ブラッドリー(Alan Bradley)
1938年 カナダ・オンタリオ州トロント生まれ
カナダの推理作家 1994年、専業作家になるため大学を早期退職。
2007年「パイは小さな秘密を運ぶ」で、
CWA賞(英国推理作家協会)デビュー・ダガー賞、2010年アガサ賞最優秀新人賞
など、多くの受賞を果たしています。
<少女探偵フレーヴィア>シリーズは、舞台がイングランドです。
作者のアラン・ブラッドリーは、CWA賞の受賞のためにロンドンへ出発。
御年69歳。はじめての北米脱出となりました。
「シリーズは、10作まで執筆」予定ということですが、
6作で、日本での刊行はストップしている状態です。
フレーヴィアの新しい門出が決定となったところでした。
この後のフレーヴィアの生活にも謎解きにも、
興味がつきないところなので、
早めの次作の刊行をお願いしたいところです。
<少女探偵フレーヴィア>シリーズ
1、「パイは小さな秘密を運ぶ」(英・2009年刊行(日本・2009年11月刊行))
2、「人形遣いと絞首台」(英・2010年刊行(日本・2010年12月刊行))
3、「水晶玉は嘘をつく?」(英・2011年刊行(日本・2011年11月刊行))
4、「サンタクロースは雪の中」(英・2011年刊行(日本・2012年11月刊行))
5、「春にはすべての謎が解ける」(英・2013年刊行(日本・2014年4月刊行))
6、「不思議なキジのサンドウィッチ」(英・2014年刊行(日本・2015年11月刊行))
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